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カバーノチカラ展に寄せて
実験精神あふれる挑戦に期待


 よしもとばななの小説『イルカ』を読んでいたら、ヒロインの交際相手が出版社の「装丁をデザインする部署」に勤めているという設定だった。日本図書設計家協会会員でもある川上成夫さんが昨秋協力したテレビドラマ「今夜ひとりのベッドで」も、主役が装丁を中心に活躍するデザイナーということで話題を集めた。職掌としての装丁が社会に認知されるようになった結果であるに違いない。
 文化を映す鏡である装丁。時代の感受性のありかたや集団的無意識を、私たちは装丁を介して理解することができるが、ヴィジュアル優位の昨今の文化状況はその注目度をますます高めている。
 こうした装丁の魅力を世に知らしめるうえで、日本図書設計家協会が創設以来、地道に取り組んできた活動の意義は格別だ。その協会が、このたび自主制作百冊を含むカヴァー展を行う。いい意味での〈青っぽさ〉を律儀なまでに守っている協会らしい好企画である。
 自主制作で思い出すのは、かつての日宣美展が同様の試みを続けて、デザイン表現の可能性を着実に拡大したこと。実際、日宣美展には幾多の果敢な問題提起があった。今回の協会の企画展も、こぢんまりとまとまらない、実験精神あふれる挑戦に期待したいと思う。
臼田捷治(デザインジャーナリスト)