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「贅沢なカヴァーたち」


◎書籍にとってカヴァーの役割は、本を保護すると同時にその著作の顔であり広告媒体である。
私は書店で本に出会う時、帯の言葉に誘われ、カヴァーデザインの仕掛けを楽しみ、手に取りパラパラと頁をめくる。そして帯を外し、カヴァーを持ち上げ、表紙の顔つきまで確認しては程よい重さと風合いを感じながら、「これは買いだ!」とレジに向かうことが多い。装丁デザインとはジャズのアドリブのように、出版される時点で、その本だけが紡ぎ出す出会いの結晶とも考えている。実際の装丁作業においては著者、編集者の意図を汲み取り、ビジュアル化したプレゼンテーションを2、3案提案することが多い。
◎そんな普段の制作の中で、日本図書設計家協会ならではの実験的な企画展が実現した。正会員41名のイラストレーターによる装画と50名のデザイナーによる装丁がコンビを組み、二つの著作に挑戦する。ジャン・ジオノ著「木を植えた人」と谷川俊太郎 詩「二十億光年の孤独」である。この二つの著作に対し100冊に及ぶなんとも贅沢なカヴァーたちが誕生する。
◎今回の企画は、実際の仕事ではブレーキをかけられがちな面にも捉われることなく、個性を際立たせるチャンスである。「僕は直接依頼される仕事より、複数でのコンペが大好きだよ!」十数年前、旅の道すがら聞いた亀倉雄策氏の言葉を思い出した。その意味するところは、大役を担う時にプレッシャーでイメージが硬直化するより、のびのびと取り組める事でよりよい仕事をすることができるということだった。
◎いまや「十人百色」の成熟社会の中で、個人の蔵書として自分だけのオリジナル版があってもおかしくない時代ではないだろうか。願わくば紙媒体としての出版が、情報化時代の中で文化の王道と位置付けされるための活力のある提案のひとつになればと考える。
◎最後になりましたが、「カヴァーノチカラ」展開催にあたり、賛助法人各社の惜しみないご協力に改めてお礼申し上げます。
日本図書設計家協会 常任委員長 ペドロ 山下